

レベルアップ研修
全登録里親を対象に、養育技術の維持・向上を目的とした研修を行います。里親さんがご自身の里子養育に対して自信を持つことに繋がり、また目の前にいる里子への関わりにすぐに役立てることができる研修を目指しています。
2019年度
第1回目 レベルアップ研修

第1回目は精神科・児童精神科である札幌こころの診療所医師 鹿野智子氏をお招きし、「子どもがちからを発揮するために~関わり方のヒントを学ぶ」というタイトルで、里親さんの生の声を講師への質問に反映させる形での研修を行いました。各里親さんが里親養育する上で困り、糸口を見つけたいと答えを求めるものが多く、フロアーにいる同じような体験をしている里親さんからの意見を伺い、その上で講師から直接、里子の心情の理解を深め、関わり方のヒントを頂きました。
参加里親さんからは、「里親や里子のことを知ろうとしてくださっていると感じた」、「何かあった時は相談したいと思った」と児童精神科医療を身近に感じられる機会になったとの感想を頂きました。また「質問に一つずつ答えてくれる研修の仕方が良かった」、「フロアーにいる里親さんの貴重な体験を聞け、その上で医師からの的確なアドバイスを頂くのはとても貴重な機会だった」とフロアーとのやり取りを通した研修の仕方にもご好評を頂きました。
第2回目 レベルアップ研修

第2回目のレベルアップ研修は早稲田大学の上鹿渡和宏先生をお招きし、「これからの里親養育~関わり方の質を高めるために~」と出した研修を開催しました。
前半の講義では、社会的養護を必要とする児童にとって愛着関係を築くためには里親養育が有効であることについて、これまでの世界中の研究結果から様々な資料を通してお話下さいました。その後は里親養育の質を維持していくために、これからは里親養育においては里親と協働して子どもを養育する専門家チームが必要であること、個々の里親の専門性向上のためにトレーニングの必要性についてお話されました。後半は、ご自身が英国より日本に導入された里親養育に特化したトレーニングプログラムであるフォスタリングチェンジのスキルの中から、子どもとより良い愛着を築くための「アテンディング」という技術についてご講義していただき、ロールプレイで体験しながら学ぶ時間となりました。参加した方々からは、「公的養育を担う里親として意識を変え、学んでいかなきゃいけないのだと思った」「アテンディングのスキルは里親だけではなく、多くの子育てをしている人に学んでもらいたい」との声を頂きました。
第3回目 レベルアップ研修

2019年度第三回のレベルアップ研修は、法政大学の岩田美香先生をお招きし、「里親の専門性を考える」と題した研修を行いました。
前半は「里親の専門性とは何か」をテーマに講義がありました。
社会的養護を必要とする児童を養育している児童養護施設の職員、医師や看護師、社会福祉士や臨床心理士のような専門家が里親になれば里親の専門性が高いと言えるのか…という疑問が最初に提示されました。また、「試し行動」「発達障がい」など専門用語を使用することで子どもたちから発せられるメッセージを理解しようとすることも多いが、専門用語を使用することで安心してしまい、個々の子どもたちの理解を曇らせてしまうことに繋がらないかというお話がありました。
後半はアメリカで作成された里親養育に関するドラマを通して里親側・里子側の両方の視点に立ちながらグループで話し合い、意見を交換しながら理解を深めていく時間となりました。
この研修を通して、里親さんの専門性とは、目の前にいる子どもたちのことを理解したい、知りたいと思い続け、そのためには子どもとコミュニケーションをとり続けることが大切なのではないかということに気づきに繋がりました。
第4回目 レベルアップ研修

第4回目のレベルアップ研修は、浦川ひがし町診療所の副院長である伊藤恵里子さんをお迎えし、「里親応援ミーティング」と題した研修を行いました。
研修前半は講師がこれまで長く実践してきた「応援ミーティング」について、説明がありました。「応援ミーティング」とは精神科医療において“当事者と支援者が一緒に安心とつながりを作り出す場”であり、”安心安全な暮らしをめざして共同研究し続ける場”です。
研修後半は、応援ミーティングを体験しました。ある里母さんにご協力いただき、実際に里子との関係で今、困っていることを教えてもらい、その課題について、参加者全員がひとつのチームとなり、まるで作戦会議のように、関わり方について話し合いました。その上で、里母さんが今、困っている状況についてロールプレイを実施しました。その様子を見ていた参加者は、客観的な立場で課題を捉えながら、里母側・里子側の両方の視点について、グループに分かれて話し合いました。グループでの話し合いは活発に行われ、里子の行動の背景に考えられる様々な思いや考えに触れ、里子を理解する幅広い視点を得ました。
参加者からは、「ぜひ里親会でも応援ミーティングを活用したい」「とても勉強になった」という感想を頂きました。この研修を通して、里親自身が安心安全な環境で子育て出来ることが、里子を支えるうえでとても大切であることを実感する機会となりました。実際に里親同士・各関係機関の支援者との繋がりを通して、困っていることについて自己表現することの良さ・同じ里親仲間から守られた安全な場で、自分の気持ちを語り受け入れ、励まされる体験に繋がりました。
2020年度
第1回目 レベルアップ研修

2020年度第1回目のレベルアップ研修は、「子どもの心身の発達」と題し、講師には子どもの虹情報研修センターの増沢高氏をお迎えして研修を行いました。
2019年に行った里親更新研修が大変好評であったため、全体研修であるレベルアップ研修として再演しました。
基本的な発達心理学の学びに加え、社会的養護を必要とする子どもたちの背景にある虐待・マルトリートメントの影響が、子どもたちにどのように影響していくのかを、里親養育の視点からわかりやすくお話していただきました。
参加者からは、「里子の悩ましい行動の奥に、どれほど深い不安があるのかと改めて考えさせられました」「大変満足。もっと勉強したい」と、昨年同様ご好評をいただき、子どもたちをこれまで以上に幅広い視点で理解するためのスキルを獲得することに繋がりました。
第2回目 レベルアップ研修

第2回目のレベルアップ研修は、「ささえてを支えて~これからの社会的養育が目指すもの~」と題して、当施設の施設長である秦直樹が講師を務めました。
2012年から里親支援を開始した当法人ですが、なぜ里親支援が必要だと考えたのか、これからの展望等、里親支援について当法人の思いや願いについて、参加者に向けて話しました。
研修前半は、自身の幼少期に施設の子ども達と共に育ってきた体験、施設職員として勤めた経験、そして自宅で地域小規模児童養護施設を開設した体験など、これまで社会的養護を必要とする子どもたちと様々な立場や役割で関わってきたことを話しました。その豊富な経験から、子どもたちにとって、それぞれが抱えている大きな課題を一緒に考えてくれる信頼できる大人の存在がとても大切であること、その存在である里親さんが安心して子育てが出来るようなお手伝いをすることが、児童養護施設の役目であると考えていることを伝えました。そのために、昨年度受託した里親研修・トレーニング事業及び今年度受託した里親養育支援事業を通して、今後も児童養護施設の役割を理解し、施設が持つ資源やスキル・技術を里親家庭に適切に還元していくことを伝えました。参加者からは、「当事者、協力者としての想いが伝わり、とても心強く思えた」「施設との連携が理解できた」「里親と施設の専門性が理解できた」という声をいただきました。
第3回目 レベルアップ研修

第3回レベルアップ研修は、「施設から地域へ~安心して地域で暮らすために~」と題して、浦河ひがし町診療所 理事長・院長である川村敏明氏をお迎えしました。
講師は北海道浦河町で精神科病棟の休止を機に、浦河ひがし町診療所を開院した精神科医です。入院しながらベットの上で治療するのではなく、地域で生活しながら患者さんそれぞれが自分らしく生きることが出来る形を目指し、長く地域精神科医療を支えて来られました。また、川村先生の医療支援からさらに発展した当事者の活動拠点である「べてるの家」は、当事者が暮らしの中で見出した生きづらさや体験を持ちより、それを研究テーマとして仲間や関係者と共にその人にあった自分の助け方や理解を見出していこうとする当事者研究・応援ミーティングへと繋がっています。
里親でもある講師からは、「安心して子育てが出来る繋がり」の大切さ、「当事者が言葉を使って自分を表現すること・自分のことを自分で語れる大切さ」、「子どものことで困るときは困っている自分を考えるという視点」、「普通に疑問を持つ」など本当に多くのメッセージが語られました。その軽快な語りに会場は笑いに包まれ、参加者からは「繋がること、孤立しないことの重要性、語ることの効果を改めて感じた」・「色々なことを広い見解で物事を考えるようになった、肩の力を抜いて子育てを楽しみたい」など参加者からの声を頂き、大変ご好評いただきました。
